記事紹介2023年05月26日

都心オフィス需要拡大も、大量供給で下押し圧力強まる賃料の行方

東京都心のオフィス需要が拡大している。コロナ禍からの経済回復を受け、出社率が増加。働き方の多様化も加わり、拡張を目的とした移転や同一ビル内での増床を決める動きがみられる。ただ、足元ではかねて需給が緩むと指摘されてきた大型物件の大量供給「2023年問題」が始まっている。既存ビルを中心に全体の空室率は上昇が見込まれ、賃料の下押し圧力が強まる公算が大きい。

不動産サービス大手JLLによると、東京都心におけるオフィス需要面積の増減を示す「ネットアブソープション」は1―3月に11万6000平方メートルを記録。住友不動産による「ファーストタワー」や「東京三田ガーデンタワー」など大型の新規供給が需要を喚起したとみられ、3カ月で2022年通年の約1・2倍、過去10年間の年平均を約2・7倍上回る格好となった。

この流れを受け、4月時点の空室も縮小している。オフィス仲介大手の三鬼商事(東京都中央区)の調べによると、都心5区(千代田、中央、港、新宿、渋谷)に建つオフィスビルの平均空室率は6・11%と前月比0・30ポイント低下。新築・竣工予定ビルへの移転による解約があったものの、建て替えや拡張による移転も多く、空室面積は3月より約7万2700平方メートル減った。

だが、コロナ禍を経験した企業が求めるのは立地や共用設備、環境性能といった付加価値を訴求できる「近年のテナントニーズを捉えた物件に限られる」(JLL)。都心で進む大型再開発に伴い、森ビルや東急不動産、三菱地所などが今後5年で供給する物件はいずれもその対象だ。こうした物件への移転が相次ぐのは必至で、既存ビルとの優勝劣敗はより鮮明になる。

一方、4月時点の平均賃料は1坪(約3・3平方メートル)当たり1万9896円と前月より0・48%下がり、2カ月連続で2万円を割った。下落は33カ月連続となる。新築ビルは前月比1・18%安の同2万6852円、既存ビルは前月比0・48%安の同1万9756円だった。最近は空室を残して竣工する最先端ビルも出ているが、賃料調整の局面は訪れないとの見方が強い。

(ニュースイッチより引用)

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